ペアン コッヘル 違い。 ペアンとコッヘルの見分け方と使い分けのコツ

ペアンとコッヘル~[手術器具] 鉗子の基本

ペアン コッヘル 違い

手術室にある医療器械について、元手術室勤務のナースが解説します。 今回は、『 ケリー鉗子』についてのお話です。 なお、医療器械の歴史や取り扱い方については様々な説があるため、内容の一部については、筆者の経験や推測に基づいて解説しています。 黒須美由紀 〈目次〉• ケリー鉗子は組織剥離用の鉗子 全体的に細身の鉗子で、先端部の造りはとても繊細 とは、組織剥離用の鉗子です。 ケリー鉗子は、や組織把持のためにも使用しますが、 組織剥離に使用されることが多い鉗子です。 ケリー鉗子は、ペアン鉗子に比べて全体的に細身です。 細くなることで「しなり(たわみ)」が生じるため、適度な弾力性とやさしい把持力が備わっています。 ケリー鉗子の先端は、同じ大きさのペアン鉗子と比べて、かなり細くなっています。 また、 把持した組織の挫滅(圧力により組織が破壊されること)を防ぐため、把持部には縦溝が付いているものもあります。 医療器械メーカーによっては、鉗子を閉じた状態でも違いが見分けられるよう、「縦溝があるものは先端部が金色」というように、色分けしていることもあります。 memoケリー鉗子とペアン鉗子は先端部で区別する() 一般的に、 同じような長さでも、先端部がより細くきゃしゃな作りになっている(精巧に作られている)ものがケリー鉗子と覚えましょう。 ドクターの中には、ケリー鉗子のことを「女性的」と表現する方もいます。 図1ケリー鉗子とペアン鉗子の違い 繊細な組織や深部の組織を剥離する際に使用する ケリー鉗子は、手術をはじめ、婦人科、泌尿器科、呼吸器外科など、主に開腹手術や開胸手術を行う診療科の手術で使用されます。 主な使用用途は、比較的深い部位での組織剥離などです。 ケリー鉗子の長さや彎曲(わんきょく)具合は、操作部位の深さや形状に合わせて使い分けられています。 長いペアン鉗子でも深部の組織剥離は可能ですが、ケリー鉗子の方が把持部先端の形状が細身なため、 血管のすぐ横の薄い膜を剥離するというような繊細な作業は、ケリー鉗子の方が適しています。 また、結紮用の糸を通す際にも、ケリー鉗子は使用されます。 彎曲した先端部を血管の下に通して、糸を挟んだ後、ケリー鉗子を引き抜くと血管の下に糸が通り、結紮することができます。 memoメーカーによって形状は少しずつ異なる ケリー鉗子の先端部のカーブの角度が3段階あるというのは、どのメーカーでもおおよそ共通していることですが、鉗子全体の長さや先端部の細さは異なることがあります。 また、ラチェット部分の硬さや全体のしなり具合もメーカーによって異なります。 呼び方・形状が多種多様なケリー鉗子 ケリー鉗子は、比較的、新しく登場した鉗子です。 そのため、 メーカーによってはさまざまな呼び方や形状があります()。 表1ケリー鉗子の呼び方と形状・長さ 呼び方 形状 ケリー鉗子 弱彎、中彎、強彎、アングル型など各種 鋸型ケリー鉗子(メーカーによっては「ドベーキー」とも呼ぶ) 縦溝付き ケリー直型鉗子 カーブなし ケリー有鈎鉗子 細長いコッヘル鉗子のような形状 ケリーライトアングル鉗子 カーブから先端部までの長さが短い 呼び方 長さ 小児用ケリー鉗子(モスキートケリー鉗子) 18cm程度 特長ケリー鉗子 24cm程度 また、メーカーによる製品の違いやドクターの好みによって、病院で使用されているケリー鉗子は変わってきます。 例えば、同じように「ケリー鉗子」と呼ばれるものでも、しなり具合の違いなどによって、消化器外科の手術と呼吸器外科の開胸手術では、形状が少し異なるものを使用することがあります。 また、神経外科の手術で、マイクロ(顕微鏡)が入らないごく浅い部位(皮下や、硬膜の周囲など)に使用する場合は、主に消化器外科で使用されている「小児用ケリー鉗子」を使用することもあります。 memoケリー鉗子はいつでも2本セット 通常、器械盤の上には、コッヘル鉗子やペアン鉗子は5本や10本単位で置いてありますが、ケリー鉗子は1ペア(2本)しか無いことが多いです。 しかし、実際に使用する場合には、ペアで使用するシーンが多くみられます。 1本目で、剥離しようとする組織を把持しながら、もう1本で剥離(膜に穴を開ける)などの操作をします。 万が一、 手術中にケリー鉗子の1本が使用できなくなった場合には、すぐに新しいケリー鉗子を用意する必要があります。 しかし、ケリー鉗子は、基本的に2本1組で滅菌していることが多いため、予備として滅菌されているもう1ペア(2本)のケリー鉗子を器械盤に出すことになります。 ケリー鉗子の誕生秘話 いつ、何のために開発されたのか不明 「ケリー鉗子がいつ誕生したのか?」「誰が何のために開発したのか?」実は、これらに対する明確な記録は残っていません。 例えば、「Dr. コッヘルが考案したコッヘル鉗子」や「Dr. ペアンが考案したペアン鉗子」などは記録として残っていますが、 ケリー鉗子については逸話として残っている話がありません。 しかし、ケリー鉗子の誕生のルーツを探すいくつかのヒントはあります。 ケリー鉗子はメーカーによって形も大きさも異なることが多い コッヘル鉗子やペアン鉗子は、どのメーカーの製品でも、おおよその形や大きさはよく似ています。 仮に違うメーカーの製品が同じ器械セットの中に組み込まれていても、その違いに気付かない場合もあるくらいです。 しかし、ケリー鉗子は違います。 例えば、カタログ上はよく似た器械でも、メーカーによって「ケリー止血鉗子」と「ケリー剥離鉗子」のように呼び方が変わることがあります。 また、ケリー鉗子をよく見てみると、メーカーによって把持部の溝が、横溝のものと縦溝のものがあったり、形や大きさも少しずつ異なります。 例え、ケリー鉗子と呼んでいても、 異なるメーカーの製品では手術中にペアとして使うことができないので注意してください。 ケリー鉗子以外にも、「ケリー」と名前の付く手術器械が存在する 「ケリー」と名前の付く手術器械は、開創器(切開創を大きく開いたままにしておく器械)のブレードや、開腹鈎にもあります。 最近では、内視鏡用の鉗子の中にも、「ケリー」と名前が付くものがあるようです。 医学の幅広い領域で活躍したDr. ケリー 1800年代後半のアメリカに、Dr. ケリー(Howard Atwood Kelly)という外科医がいました。 当時は、現在のように診療科が細かく分かれていなかったため、Dr. ケリーは外科だけではなく、産婦人科にも精通した医師だったようです。 現存する「ケリー」と名前の付く器械が、すべてDr. ケリーが開発したものだったとすれば、偉大な功績を遺した外科医だったと推測できます。 memoケリー鉗子が日本にきたのは昭和中期 ケリー鉗子が日本にきた正確な年は判明していませんが、ケリー鉗子は、少なくとも1960年頃には医師によって好みが分かれるほど普及した器械だったようです。 この少し前(1950年頃)には、日本で初めてカメラが開発され、胃の早期発見ができるようになりました。 これらの事実を合わせて考えると、この頃から、日本でも開腹による胃がん手術が数多く行われるようになったと想像できます。 ケリー鉗子が日本に入ってきたのは、この時代だったのかもしれません。 ケリー鉗子の特徴 サイズ メーカーによって異なってきますが、最も 一般的なサイズは20~22cm程度です。 これよりも大きなもの(24cm以上)は、手術室では「長ケリー」と呼ばれることがあります。 なお、名称は「小児用」ですが、が比較的浅く、より繊細な操作が必要な時には、成人の手術でも使用されます。 形状 先端部(把持部)の形状は、一般的に、「弱彎」「中彎」「強彎」の3段階があります。 中彎の場合、カーブの位置から先端までは、およそ1cm程度です()。 図2ケリー鉗子の先端部の形状 左から弱彎、中彎、強彎。 把持部の内側にある溝は、横溝のものが一般的ですが、特殊性のあるものとして、縦溝(鋸歯〈きょし〉とも呼ばれます)のものもあります。 memo細身で長いケリー鉗子 ケリー鉗子の先端は、同じ長さの曲型長ペアン鉗子と比較すると、より細く、より薄くできています。 指を入れる穴の部分から関節部までの距離は、関節部から先端までの距離の約2倍強の長さがありますが、メーカーによっては、この差がさらに大きなものや、逆に差が小さいものがあります。 材質 現在のケリー鉗子はステンレス製です。 メーカーによっては、より硬度が高い13crステンレスを使っていますが、若干錆びやすいため、取扱いには注意が必要です。 ステンレス製になる以前は、鉄製ニッケルクロームメッキ製のものが多かったようです。 製造工程 ケリー鉗子が製造される工程は、コッヘル鉗子と同様です。 素材を型押し、余分な部分を取り除き、各種加工と熱処理を行い、最終調整を行います。 価格 一般的なサイズのもので 1本3,000円~8,000円程度です。 しかし、メーカーによっては、改良された特殊形状のものは数万円のものもありますし、チタンコーティングなどが施されている場合は、10万円近くになるものもあります。 寿命 ケリー鉗子の寿命は、明確には決まっていません。 使用年数だけではなく、使用頻度や、使い方によって変わってきます。 ケリー鉗子は、コッヘル鉗子やペアン鉗子などと比較すると、先端がとても繊細です。 そのため、他の鉗子に比べて、手術中のドクターの使い方はもちろん、器械盤の上での看護師の取り扱い、洗浄・滅菌の過程など、大きな影響を受けやすくなっています。 ケリー鉗子の使い方 使用方法 スリムな形状と、多様な彎曲の形状を利用した使用方法があります。 いずれも、 操作部位の深度に合わせた長さのものを使用します。 剥離を行う場合 薄い膜の奥にある血管を露出させる際には、その薄い膜を剥離する必要があります()。 このような場合、まずは血管に沿って両脇に穴をあけます。 この際、ケリー鉗子の先端は、血管に沿って下向きに滑らせるようにしながら、より深い位置まで入れていきます。 また、臓器同士が癒着している部分の剥離にも、ケリー鉗子が使われます。 例えば、腸管同士が癒着している場合、腸管に穴をあけないように、腸管と腸管の境目にケリー鉗子を入れて、ゆっくりと押し進めます。 この時、 ドクターは細心の注意を払いながら操作しているため、間違ってもドクターの腕に触れたりしてはいけません。 ドクターの手元が狂い、血管や周囲の組織を傷つけることにつながります。 糸通しを行う場合 血管を結紮する際、血管の下にケリー鉗子を通し、あらかじめ直型のペアン鉗子で挟んで持っている糸をつかみます()。 そのままケリー鉗子を引き抜くと血管の下に糸が通るため、その糸を縛り、血管を結紮します。 血管テーピングも同様の手順で行います。 類似の医療器械との使い分け ケリー鉗子以外にも、先端部の曲がったペアン鉗子やモスキート鉗子が、剥離操作などで使用されます。 操作を行う部位の深さによってそれぞれ器械を使い分けますが、 同じような深さでも、血管の周辺で使用したり、把持する組織の硬さの違いなど、操作する状況によって使い分けられます()。 図5操作部位の深さと操作に適した鉗子 浅い部位にはモスキート鉗子、深い部位にはケリー鉗子が適しています。 禁忌・使い方の注意点 というほどではありませんが、ケリー鉗子は、より繊細な操作が必要な組織に対して使用することが多いため、 操作している周辺の組織を傷つけないよう、先端は「鈍」なもの(より尖っていないもの)を使用しましょう。 不用意に「鋭」に近いもの(より尖っているもの)を術野へ出してはいけません。 また、ケリー鉗子がドクター(術野)の元から手元に戻ってくる時は、必ず、手渡してもらうようにしましょう。 手渡しではなく、器械盤などの上に鉗子を乱暴に置かれると、先端部分の歪みや、咬みあわせのズレを起こすことがあるためです。 ナースへのワンポイントアドバイス 先端の彎曲具合の違いを覚えておこう ケリー鉗子は、 先端のカーブの角度で「弱彎」「中彎」「強彎」に分かれます()。 一般的に、「ケリー鉗子」とだけ言われた場合は、「中彎」を指していることが多いですが、ドクターの好みによって変わるため、必ず確認しましょう。 また、メーカーによっては呼び名が違うこともあるため、所属の手術室で何と呼ばれているかを、きちんと確認しておきましょう。 使用前はココを確認 先端の咬み合わせが歪んでいないか、正面から見た時にきちんと咬み合っているか(隙間がないか)を確認しましょう。 術中はココがポイント ドクターに手渡すときは、 ラチェット部分を1つだけ閉じた状態で手渡しましょう。 こうするとドクターがすぐに使用できるので、とても親切な手渡し方です。 その際、ドクターが器械を確認できるように、 「ケリー鉗子です」と、声を出して手渡しましょう。 場合によっては、「弱彎です」「小児用です」などと言ってもOKです。 使用後は歪み・破損に注意 ドクター(術野)からケリー鉗子が戻ってきたときは、 咬み合わせが歪んでいないか、先端などに破損がないか、咬み合わせに隙間がないか、などを念入りに確認してください。 咬み合わせが歪んでいると、もう使用できません。 破損がある場合は、ドクターにも術野を確認してもらう必要があります。 「先生、ケリーの先端が破損しているようですが、術野に落ちていませんか?」などのように、 必ず執刀医に、はっきりと伝えましょう。 もし、若い助手のドクターにこっそり伝えたとしても、起こっている出来事の重要性をわかってもらえない可能性があるので注意してください。 手元に戻ってきたケリー鉗子に、特に問題が無ければ、またすぐに使用できるようにを含んだガーゼなどを使って、などの付着物を落としておきましょう。 片付け時はココを注意 洗浄方法 洗浄方法の手順は、下記(1)~(3)までは他の鉗子類の洗浄方法と同じです。 (1)手術終了後は、必ず器械のカウントと形状の確認を行う (2)洗浄機にかける前に、先端部に付着した血液などの付着物を、あらかじめ落しておく (3)感染症の患者さんに使用後、消毒液に一定時間浸ける場合、あらかじめ付着物を落としておく (4)洗浄用ケース(カゴ)に並べるときは配置に注意 ケリー鉗子は、他の鉗子に比べて長いため、ケリー鉗子を開いた状態で洗浄用のケースに並べる場合は、先端が他の器械にぶつからないように、配置に注意しましょう()。 図6洗浄用ケースに並べる方法 洗浄時は、開くことができるものは完全に開く、外せるものは外すのが基本です。 左上段より、コッヘル鉗子、モスキート鉗子、ペアン鉗子、長ペアン鉗子、マチュウ、リンパ節鉗子、アリス鉗子、長剪刀、短剪刀、ヘガール持針器。 左下段より、ミクリッツ鉗子、 ケリー鉗子、腸鉗子、長、短鑷子 滅菌方法 コッヘル鉗子と同様に高圧蒸気滅菌が最も有効的です。 [参考文献]• (1)• (2)高砂医科工業株式会社 高砂鉗子(添付文書). (3)• (4)• (5)C. トンプソン(著), 川端富裕手(訳). 手術器械の歴史. 東京: 時空出版; 2011. (6)石橋まゆみ, 昭和大学病院中央手術室(編). 先輩ナースのチエとワザ オペナーシング 08年春季増刊. 大阪: メディカ出版; 2008. (7)南山堂医学大辞典 第20版. 南山堂; 東京: 2015. [執筆者] 黒須美由紀(くろすみゆき) 元 手術室看護師。

次の

コッヘル鉗子とペアン鉗子の違いについて知りたい|ハテナース

ペアン コッヘル 違い

実際の使用法としては、ペアンは主に血管を糸で縛り血流を止めて血管を切る手技(結紮)時の糸を医師に渡す際にペアンの先で糸を掴み渡す(ペアン糸)際に使用します。 その時には一般的に曲りのものを使用しますが、病院によっては直を使用します。 そのほか、比較的柔らかくかつ内臓以外の組織を鋏むことにも使用されます。 コッヘルは、止血監視としての登場もありますが、皮膚の下から筋肉の上の限られた範囲で使われます。 そのほか、鈎があるので、滑らず把持力もそこそこ強いので筋膜の把持や、腹膜の把持・骨の把持に使用されることもあります。 また、ツッペルという剥離用のガーゼの小さな球を挟むときにも使用されます。 そんな使われ方をするので当然曲がってしまうことも多々あります。 ペアンであれば曲がってしまえば即引退(破棄)ですが、コッヘルはそう簡単には引退せず、余生として消毒用の鉗子としての道も残されています(病院によってですが)。 そして、消毒をはさむことができないくらい把持力がおちてしまったら引退となります。 このように使用法は違う2種類の鉗子ですが、見た目はほとんど同じで見分けがなかなか付けられず、渡したら違いましたなんたこともあります。 確実な見分け方法は鉗子の先を凝視するか、開いて鈎の有る無しを確認するのが安全ですが、これ以外でもひと目でどちらがペアンと見分ける方法があります。 それが、鉗子のとって近くの溝のあるなしです。

次の

ペアン鉗子|鉗子(2)

ペアン コッヘル 違い

手術室にある医療器械について、元手術室勤務のナースが解説します。 今回は、『 ミクリッツ鉗子』についてのお話です。 なお、医療器械の歴史や取り扱い方については様々な説があるため、内容の一部については、筆者の経験や推測に基づいて解説しています。 黒須美由紀 〈目次〉• ミクリッツ鉗子は腹膜専用の鉗子 先端部にとても頑丈な鈎が付いている ミクリッツ鉗子とは、腹膜専用の鉗子です。 ミクリッツ鉗子は、コッヘル鉗子のように先端部に鈎がある、有鈎の鉗子です。 医療器械メーカーによっては、「ミクリッチ」と発音(表記)することもあります。 パッと見た感じは、かなり大きめのコッヘル鉗子のように見えますが、 把持部の彎曲が強く、溝のある部分が短い、という特徴があります。 また、ミクリッツ鉗子には、「外し型」と「BOX型」の2タイプがあります。 memo「外し型」と「BOX型」の違い ミクリッツ鉗子には、「外し型」と「BOX型」の2種類のタイプがあります。 外し型は、1本の鉗子を2つに分解することができるため、よりキレイに洗浄することができます。 しかし、外し型は、関節部のネジが表面に出ているため、このネジが外れてしまう危険性があります。 手術中、ドクター()から鉗子が戻ってきた場合には、この 関節部のネジが無くなっていないか、破損していないかを併せて確認しましょう。 BOX型は、鉗子の中にネジが埋め込まれた形状になっていますので、使用中にネジが外れてしまうことは、ほぼありません。 ミクリッツ鉗子を使用する場面 基本的に、ミクリッツ鉗子の使用用途は、腹膜を把持することです。 開腹手術中(腹膜切開から閉腹まで)、 腹膜を開いておくために使用されます。 一般的に、ミクリッツ鉗子は、開腹手術の器械セットの中に6本入っています。 手術室や術式によっては、8本や10本のこともあります。 6本が組み込まれている場合、手術で開腹した時には、6本すべてを術野に出し、 腹膜を6ヶ所でつかみ、腹膜が開いた状態を維持します。 その後、開腹鈎をかけて、開腹した状態を維持しながら手術を進めていきます。 直接介助の看護師が、次にミクリッツ腹膜鉗子を手に取るのは閉腹時です。 閉腹用の糸で腹膜を縫合する時に、ミクリッツ鉗子を順番に外していくことで、術野から鉗子が看護師の手元に戻ってきます。 6本のミクリッツ鉗子を外す順番は、(1)頭側の横の2本、(2)下肢側の横の2本、(3)頭側と下肢側の頂点部分の2本の順に鉗子を外すことが多いようです。 memoミクリッツ鉗子の数え忘れには要注意 ミクリッツ鉗子は、サイズが大きいため、内に忘れるということはほとんどありません。 しかし、閉腹操作への移行時は、鉗子が手元に戻ってくるなど、直接介助の看護師はとても慌ただしくなります。 そのため、器械カウントは、数え忘れがないように注意しましょう。 ミクリッツ鉗子の誕生秘話 外科医のDr. ミクリッツが開発? ミクリッツ鉗子が、いつ、どのような目的で、誰の手によって開発されたのか、正確なことはわかっていません。 しかし、19世紀のヨーロッパに、ヨハン・フォン・ミクリッツ(Johann von Mikulicz-Radecki:Dr. ミクリッツ)というオーストリア系ドイツ人(ポーランド人という説もある)の医がいました。 ビルロートの手術との関係性 Dr. ミクリッツは、世界で初めて癌切除の手術を成功させたテオドール・ビルロート(Christian Albert Theodor Billroth:Dr. ビルロート)の弟子でした。 ビルロートは、世界の名だたる音楽家と親交が熱い人物でしたが、普段は近づき難く、弟子たちの頼みにも素直に耳を傾けない堅物な性格だったと言われています。 一方、その弟子であるDr. ミクリッツは、患者さんやその家族からのお願いに親身になって応えたり、患者さんの家族から受け取った手紙に返事を書くなど、色々なことに前向きな人物であったと言われています。 外科医としても、新しいものを取り入れようとする性格だったようです。 ミクリッツは、Dr. ビルロートが行った世界初の幽門側胃切除術にも関係していたと考えられています。 師であるDr. ビルロートの手術の成功を助けるため、その一環として、腹膜を大きく開けておくミクリッツ鉗子という器械を考案したのではないかと、筆者は推測しています。 ミクリッツ鉗子の特徴 サイズ メーカーによって異なりますが、一般的なサイズは18~20cmです。 小さなもの(14cm程度)は、「ベビーミクリッツ鉗子」と呼ばれることもあります。 形状 先端部(把持部)の形状は曲がっていて、関節部から先端までの半分程度が把持部です()。 図1ミクリッツ鉗子の把持部と把持部の断面 memo13Cr ステンレスの特徴 メーカーによっては、より硬度が高い13Cr ステンレスを使っています。 しかし、若干錆びやすい性質のため、取扱いには注意が必要です。 製造工程 ミクリッツ鉗子が 製造される工程は、コッヘル鉗子やペアン鉗子と同様です。 素材を型押し、余分な部分を取り除き、各種加工と熱処理を行い、最終調整を行います。 価格 メーカーによって異なりますが、一般的なサイズのもので 1本5,000円~8,000円程度です。 寿命 他の器械と同様に、洗浄・滅菌の過程での扱い方や、日々のメンテナンスなどにより、使用できる年数が変わってきます。 しかし、腹膜専用の鉗子のため、他の用途で使われることは考慮する必要はありません。 memo鈎の状態には気をつけよう ミクリッツ鉗子は、「腹膜をしっかりとつかんでおく」ための器械です。 そのため、鈎が摩耗して減ってしまった状態では、腹膜をつかむことは難しくなりますので、取り扱いは丁寧に行いましょう。 ミクリッツ鉗子の使い方 使用方法 開腹(腹膜切開)後、腹膜の断端をミクリッツ鉗子で把持し、開いた状態にしておきます。 その際、2本1組のミクリッツ鉗子を1~3組使用します。 図2ミクリッツ鉗子の使用例 開腹(腹膜切開)後、ミクリッツ鉗子で腹膜の断端(6ヶ所)をはさみ、腹膜を開いた状態にしておく。 類似器械との使い分け ミクリッツ鉗子は一般的に、開腹した時に術野へ出て、閉腹するまで手元に戻ってきません。 そのため、手術中に別の器械と取り違えるということはあまりありません。 しかし、準備したミクリッツ鉗子の一部を使用しなかった場合は、器械盤の上に数本残っていることになります。 この場合、他の器械との取り違えが起こる危険性があるため、器械盤の脇にあるポケットにしまっておく、布などで包んで触れないようにしておく、などの工夫が必要です。 また、 途中で直接介助看護師が交代する場合は、器械盤に残っているミクリッツ鉗子の本数の申し送りを忘れてはいけません。 これを怠ってしまうと、最も忙しくなる閉腹操作時に、「ミクリッツ鉗子が足りない!」という問題が発生する危険性があります。 memoミクリッツ鉗子の代用はコッヘル鉗子で 使用するミクリッツ鉗子が6本では足りない場合、長い曲型のコッヘル鉗子を代用として使用することもあります。 禁忌 ミクリッツ鉗子は、腹膜を把持することに特化した鉗子です。 他の部位や場面では使用しないため、 開腹後の臓器に対する使用や、他の器械との取り間違いは禁忌です。 ナースへのワンポイントアドバイス いつでも次の1本を渡せるように準備しておく ミクリッツ鉗子は、基本的には2本1組で使用します。 1本をドクターに渡したら、すぐに次の1本を渡せるように、手元に準備しておくとよいでしょう。 重要なことは、「必ずペア(6本、または8本など)で使うこと」です。 使用前はココを確認 先端の鈎がスムーズに噛み合うか、先端の鈎が破損・摩耗していないかを確認します。 術中はココがポイント ドクターに手渡すときは、 ラチェット部分を1つだけ閉じた状態で手渡すと、ドクターがすぐに使用できるので親切です。 その際、ドクターが器具を確認できるように、 看護師は「ミクリッツ鉗子です」と声を出して渡しましょう。 使用後はココを注意 ドクター(術野)からミクリッツ鉗子が戻ってきたときは、 鈎が破損していないかを念入りに確認してください。 破損がある場合は、術野を確認してもらう必要があります。 特に問題が無ければ、洗浄時にキレイに洗いやすくなるよう、を含んだガーゼなどを使って、などの付着物を落としておきます。 また、「外し型」を使用している場合は、関節部のネジがきちんと残っているかも、併せて確認しましょう。 片付け時はココを注意 洗浄方法 洗浄方法の手順は、下記(1)~(3)までは他の鉗子類の洗浄方法と同じです。 (1)手術終了後は、必ず器械のカウントと形状の確認を行う (2)洗浄機にかける前に、先端部に付着した血液などの付着物を、あらかじめ落しておく (3)感染症の患者さんに使用後、消毒液に一定時間浸ける場合、あらかじめ付着物を落としておく (4)洗浄用ケース(カゴ)に並べるときは鈎が引っかからない場所に置く ミクリッツ鉗子は、コッヘル鉗子などと比較すると、先端に大きな鈎が付いています。 洗浄用ケース(カゴ)に並べる場合は、自分の手袋などを引っかけないように注意しましょう。 また、雑な並べ方をすると、他の器械と重なりあってしまい、鈎を引っかけてしまうこともあるため、きちんと整頓して並べるようにしましょう()。 図3洗浄ケース内での並べ方例(ミクリッツ鉗子) 洗浄時は、開くことができるものは完全に開く、外せるものは外すのが基本です。 左上段より、コッヘル鉗子、モスキート鉗子、ペアン鉗子、長ペアン鉗子、マチュウ、リンパ節鉗子、アリス鉗子、長剪刀、短剪刀、ヘガール持針器。 左下段より、 ミクリッツ鉗子、、腸鉗子、長、短鑷子。 滅菌方法 コッヘル鉗子と同様に高圧蒸気滅菌が最も有効的です。

次の